電車の中に居た人達

【10/18 8:37】

目の前の優先座席に老人が座った。歳は60-70くらいか。natural flight(大文字)とかかれたベージュの手提げ鞄を持ち、その中から青いビニール袋がはみ出している。その青いビニール袋の中身はA4サイズのルーズリーフが数枚、これもまた少しはみ出している。ルーズリーフにはクレヨンのような画材で幼児性の書いたような見受けられる。彼は老眼鏡をかけており、私のつり革に捕まった状態だと、高低差のせいで眼鏡の裏の裸眼と眼鏡に浮き上がる眼とが重なって、いやはみ出して見える。
何もかもはみ出してるこの老人は私が電車に乗り、そして降りるまでずっと私の足元あたりを悲しげに見つめていた。もしかしたら世の中からもはみ出しているのかも知れない。

【ある日の電車内を思い出して書いた】

正面に、黒のリュックを膝の上にのせ、更に腕を回すことで固定し、そのリュックの頂点に顔をうずめ、寝ている社会人或いは大学生らしき男性が居る。観察してて一番つまらないタイプである。
右には痘痕だらけの優しそうな社会人らしき男性。彼は周りから40代だと思われており、飲みの場なので30代という事をカミングアウトし、驚かれる、といった雰囲気を醸し出している。不思議な言い回しだがそうとしか言いようがない。
更にその右には性格の悪そうなお婆さんが居る。何故性格が悪いと判断したのかというと、口を常にへの字に結び、その上顎がなく、目元のたるみが目立つからである。彼女を見てふと思ったが、やはり人の性格というのは確実に顔に現れる。もちろん強面だが優しい人、優しそうだが狡猾な人、など一見性格と顔が正反対の人も居るが、それは一つの面だけを見ているから、更に言えば、一つの面の表面だけを見ているからである。ちゃんとよく見れば彼らだって、ただの強面でなく、ちゃんと"強面だが優しい人"の面構えを、優しい人の表情でなく"優しそうだが狡猾な人"の表情をしている。まあ、あの性格の悪そうな婆さんの顔は今この電車の中で短い時間見ただけで性格が悪いと断言するには早考すぎるかも知れないが。
さて、話も目線も逸れすぎた。一度正面に戻そう。あのつまらない奴は依然寝ている。これ以上彼について言及することはないだろう。その左には林家パー子を彷彿させる痴呆じみた婆さんが座っている。パー子を彷彿させる所以はきっと異常な外ハネの天パとピンクのジャンパーであろう。しかし、パー子みたいな外見の割には彼女もまた口をへの字に結んでいる。何か考えているのかとも思ったが、異常な外ハネの天パとピンクのジャンパーを着ている奴が何かものを考えられるとは思えない。きっと、苦いものでも食べているのであろう

【10/26 8:36】

この時間の電車に乗れば恐らく余裕をもって教室に入れるだろう。よってこの記録を開始する。まず正面にいるのはプラスチック素材、茶縁の丸眼鏡をかけた女性。膝の上にはcolemonのリュックサック。ずっと寝ている。その左隣には750ml缶のビールを飲みながら新聞とスマホをみる髭面の男。齢は40代程度であろう。足元には仕事鞄があることや、服装から察するとサラリーマンなようだが…。
さて正面にもどり、さらにその右。ここには手書きのもじで埋まったメモ帳を読む縁の細い眼鏡をかけ、紺のカーディガンを着たお婆さん。書いてある内容はわからないが、字自体は小さく、筆圧も弱い、如何にも女性の書いた字、といった感じである。