二〇一九年三月十四日に見た夢

 大きいが閑散な洋服屋にてカップル同士が喧嘩している。私は彼らを知っていて、彼らの喧嘩が落ち着いたらお金をせびる事ができると思った。
 ちょうど声が聞こえなくなった為、彼らに近づき、女の方に、「喉が渇いた。コーラを買いたい」と話した。女はしぶしぶ私に千円札を渡した。それを受け取りながら、ふと私だけが飲み物を買っては悪いと感じたため、女に何が飲みたいか聞いた。女は「じゃ、コーラ」と答えた。
 私はそれを聞き入れ、店を出ようと歩みを進めたが、五十メートル歩いたあたりで女が「黒いやつ!」と私に呼びかけ、続けて隣にいる男に「これで神奈川県産のやつと分かるでしょ」と小さく呟いていた。私は億劫であったため何も反応せずに店を出た。
 外は夜であった。歩きながら私は、男にも何か飲み物を買わなければ失礼なのではないかと思った。しかし、女から貰ったのは千円のみであり、飲み物を3本買えば百円程度しか残らないではないか、と思ったが、人の金であまりケチケチするのは格好が悪いと考え、男の分も買うことにした。
 場面は転じて、大きなコンクリートづくりの施設。私がいる場所は大きく開け、一つの面は大きなガラス張りで日に照らされた木の見える庭が見える。部屋の中央にはエンジのソファーがあり、向かって木製のテレビデッキに置かれた黒色の薄型テレビがある。横には籠に植えられた私と同じくらいの背丈の観葉植物があっただろうか。
 この施設は階数も多ければ部屋数も多い。
 ある廊下にて青く塗られた重いドアを開けると壁一面に貼られたマジックミラーのような不自然な鏡と、向かって壁際に設置された簡易ベッド上にだらしない体をした全裸の中年が十数人、複雑に入り組み、静止しているのが見えた。彼らの内、顔が見えている者、全員が私を見ている。
 誰か好き好んで中年の全裸を見るものかとドアを閉め、この部屋の向かいのドアを開けた。そこは生活感あふれる雑多とした部屋だった。
 その蛍光灯の白色かつチープな灯りに包まれた空間には、十代後半と見られる女性が十数人おり、それぞれ髪の乾き具合は違うものの風呂上がりのパジャマ姿といったいでたちであり、匂いも生娘のそれが充満していた気がする。中にはパジャマのボタンをまだ止めておらず乳首が見えている者もいた。
 当然私は嬉しかったが、あまり凝視するのは失礼だろうと視界の端に留める程度にしていると、いつの間にやらボタンは止められもう見えなくなってしまった。
 そういえば、この施設の中ではあらゆる人の裸を見た気がする。勿論印象に残っているのは女性だが、男性もそれなりに居たと思う。
 場面は転じて、どこかの駐車場。やたら縦に長いキャンピングカーの荷台を開けて乗り込む。買い置きされた食料が私の身長の5倍は優に超える高さまで積まれている。もしかしたら高く見えるのは下から見上げているからで、実際はそこまでは高くないかもしれない。そしてそれらは45度近い傾斜を描いており、この傾斜の向こうに目的の運転席がある。
 私は取り敢えず食料の坂を登り始めた。
 キャンピングカーの持ち主はぼさぼさであるものの髪色の明るい可愛い女性。顔立ちはかなりアニメ的、或いは記号的。度を超えただらしなさがこのような買い置き方法を思いつかせたのだろう。
 坂のちょうどてっぺん、眼下に運転席が見えるところで、忘れ物をした事を思い出し、ひとつため息をついた後、先ほど登ってきたばかりの坂を滑り降りた。
 場面もしくは時間帯が転じて母親がバイクのようなものに乗って迎えに来た。バイクのようなものというのは、サイドカーのようなものが側面でなく後方についている小さい奇っ怪な乗り物だったからだ。私は後ろに乗り込んだ。家に向かって少し走ったところであのやたら縦に長いキャンピングカーの事を思い出した。あれは私のものだったのだ。
 恐る恐る母親に話すと、どうやら母親のほうがキャンピングカーを運転するという方向に話が進んだらしく、私がハンドルを握ってとり、先の場所に向かって歩いていく母の後ろ姿が見えた。
 場面は転じて、私の自宅とおぼしき場所。私はテレビを見ている。テレビでは今日行った施設、『近大』が紹介されている。無論『近大』とは『近畿大学』の事である。
 やはり、近大の中でも『近大マグロ』は持て囃されており、近大生は天然マグロなどには見向きもしないらしい。また『近大マグロ』に寄生するウオノエは蚕蛾のような優雅な触覚を持っているらしく、番組の中ではこのコスプレをしている近大生が取り上げられていた(白タイツにダンボールで作った触覚がついているのみというお粗末なものであったが)。

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