2018-12-01から1ヶ月間の記事一覧

十勢地町―2

がらっとカーテンを引き、捨蔵は下界を見下ろした。鋭いブレーキの音と鈍い衝突音により安眠を妨げられたからである。しかし、事実は特に面白みもなく泥にまみれた野良猫が車に轢かれていただけだった。 捨蔵は視線を朝焼けの空に向けて漠然と考えた。野生動…

十勢地町ー1

これは私の遺書のようなものである。私には配偶者も親族も既にいないのだから、これを読んでいる貴方はおそらく清掃業者であろう。 部屋に散乱している大量の手書きの地図は全て自作であり、架空のものである。つまり、そこに書かれている地名や地形は実在し…